第62章 オタクと忍者 仙石忍
できないことってあると思う。どうしようもないのは、皆同じなのだ。
「…………ねぇ」
「…………わかってるでござる」
私と忍くんは、屋根裏部屋で行き場をなくしていた。
遡ること三時間前。
『屋根裏部屋って忍者っぽいでござるな!』
その言葉に納得した私も私だが……。
生徒会の仕事を手伝うこととなり、学院の空手部がよく使う道場の屋根裏部屋を掃除しにいく途中だった。
なぜ生徒会がそんなことを、と思ったが校内アルバイトで一人も応募がなかったらしい。
確かに屋根裏部屋に入りたいなんて人は高校生ではなかなかいないのかもしれない。
汚いし、ネズミとかがいそう。
『ほんっとうにごめんな、俺もやれたらやりたいけど会議で……』
申し訳なさそうな真緒くんが思い出される。
別に仕事は嫌いじゃないし、全然平気だ。
『仙石にも頼んであるから、二人でお願いな?俺も終わったら行くし!』
それに他にも一人呼んでいてくれた。
いざ道場について屋根裏部屋にはしごでのぼったとき、事件は起きた。
バタン!!
その音に振り返った時、私達が使ったはしごは畳と仲良くしていた。
___降りられない
そう思った次の瞬間、飛んで降りようかと思ったが道場は天井が高い。無理だ。
そして携帯を取り出そうとしたとき、荷物は畳の上に置いたことを思い出した。
___降りられない
二人とも口にしない絶望の言葉は、確かにそこにあった。
部活が始まり、空手部員が来るまではあと何分だろうか。
真緒くんはいつ来るんだろうか。
希望は、今のところない。