第61章 空蝉の夏花、誰と見るのか 明星スバル
「俺、すっごく幸せだよ!」
スバルのその声に、花火から視線をそらした。すぐ横には、見慣れた眩しい笑顔があった。
「あんずと花火が見れて嬉しい。」
スバルはそう笑っていた。
私は突然何を言い出すのかとキョトンとしたが、すぐに笑い返した。
「スバルの笑顔、キラキラしてる。」
パァン、と花火がなった。
「ありがとう、スバル。私と花火を見てくれて。来年は友達皆で見ようね。」
私は、そう言って空に目を向けようとしたが……できなかった。
スバルが、プールの床についていた私の手をギュッと握ってきたからだ。
「…………スバル?」
どうしたのか、と言う前にスバルが話し出した。
「俺は、来年もあんずと二人で見たい。」
「………………………?皆は誘わないの?」
「…………俺、ずっと言えないことがあったんだ」
スバルの顔は真剣で、手から伝わる体温も熱い。
「幼なじみって、俺嫌だったんだ。小さい頃からずっと一緒ってだけであんずと仲良くできてるの。俺、高校から出会っててもあんずとこうして仲良くお話しできてたらってたまに思うんだ。」
「…………………私はスバルと小さい頃から一緒で嬉しかった…けど……?」
「違う、そういうことじゃなくて………その……ッ!!!」
スバルが全力で息を吸い込んだ。顔が、悲しげに歪んだ。
そして何もかもを吐き出すように、大きな声を出した。それと同時に私の手を握るその手に力がこもる。
「好きなんだ!!あんずが!!!!女の子としてッ!!!!!」
スバルが叫んだ。
花火の音が、消えた気がした。
世界が丸ごと、消えた気がした。
水面に写る花火が見えた。ゆらゆらと、歪に揺れた。
「…………………………………………………………ぇ?」
ずっと、知らずにいた、幼なじみの心内は。
私を大いに戸惑わせた。