第61章 空蝉の夏花、誰と見るのか 明星スバル
「ンー、じゃあお詫びにこれをあげよウ」
夏目くんは、スッと何かを差し出した。
「………………これ、何?」
「ほらほラ、腕出しテ」
彼が差し出した金属の輪っかをマジマジ眺めているとそう言われたのでスッと右手を差し出した。
「はイ」
カチャン、と音がして腕輪が腕にはまった。
ワンポイントに星の形がついていて、キラキラと電気に反射して光っていた。
「……え、何これ」
「それつけてバルくんに謝りに行っておいデ。ボクから貰ったって得意気に言うとより効果を発揮するラッキーアイテムだヨ。」
「あー………………………………?」
なるほどね、とか同意してあげたいけど無理だ。さっぱりわからない。
「ちなみにバルくんが引きちぎったとしてもボクは怒らないからね。」
「はー…、そう…………わかった…????」
いったい何を言ってるんだろう。
でも、くれるというならもらっておこう………かな。多分これ、そんなに高くないやつだし。
「花火見る見ないは関係なク、謝っておいでヨ。物言いがキツかったってことはバルくんも怒ってたかラ。」
「………うん、そうする。」
私は立ち上がって、彼に背を向けた。出口に差し掛かったところで、振り返りもせずに
「ありがとう」
と、伝えた。
「困ったもんだネ……。これでダメだったらバルくんヘタレにもほどがあるヨ。子猫ちゃん相手限定でポンコツになるんだかラ。」
幼なじみであるそうでないを抜きに、けっこうバレバレなんだけド………と、スバルに言いかけたのは夏目だけの秘密である。