第57章 最後に見た彼は 椚章臣
反省もせず授業のある教室へ向かう。
理科ならだいたいできるが、中でも斉藤は生物専門だ。
「さぁ!教科書57ページを開きなさい!張り切って行くわよ!!そして前回寝ていた遊木!!今日は50分眠らせないから覚悟しなさい!!!」
オーホッホッホッ!と高笑いしながら斉藤は教室に入る。それと同時にチャイムがなり、始めの挨拶も何もなく始まる。
「はい遊木!特定外来生物五つ!」
「え、えーと……ブルーギル、ブラックバス……えーと……えー………と?」
「隣の教科書を盾に寝ている逆先!」
「………うーン…………?ゲ、ばれタ?」
「特定外来生物をブルーギルとブラックバス以外に三つ!」
「………………わかりませン」
「おおっとその様子じゃ大分寝てたましたねー……、ちなみに、今あなたの後輩の春川が何の授業してるか知ってるかな?」
ビシッとチョークで夏目を指差し、彼女はニッコリ笑う。逆先はその笑顔に嫌な予感を覚えながらも答えた。
「……昨日の部活の時間二、調理実習だって言ってたようナ…。」
「そう調理実習!一時間目に家庭科の授業があると大変ですねぇ、朝から食べなきゃいけないんだもの!そしてそして、今何を作っているか知っていますか?」
「……………………知りませン」
「家庭の味を学習中だそうですよ。味噌汁を作っているはずです。味噌汁にはわかめと豆腐がスタンダードよね?」
「そうですネ…」
「味噌汁によく使われるわかめ……。それは海ではうにの餌になるんです。そしてそのうにを食べるのはラッコ。
逆先、あなたは寝ていた罰として次の時間までにわかめ、ラッコ、うに…この三つに関するとある外国で起こった現象をキーストーンという言葉を用いて説明できるよう調べていらっしゃい。
そして皆の前で調査結果を発表してね!」
「ウ……相変わらず寝ていた者へ対する罰が厳しイ」
「隣で笑ってる前回の授業で寝てた遊木が手伝ってくれるってー!」
「えええ僕もですか!?」
「あんたねぇ、そんなこと言う前に外来生物五つ覚えてきなさいよ」
どっとクラスが爆笑の渦に包まれる。
これが斉藤の人気の秘密かもしれない。彼女は授業の続きを始めよう、と再び黒板に向き直った。