第55章 碧の空を見上げてみたり 乱凪沙
「それでは閣下!ご武運を!」
とかなんとか言ってあの毒蛇は去っていった。いや、私をどこにつれてきた!?
ここはどこ!?えーっと公園かな、寂れた滑り台が一つ……いや一台?ううん、滑り台の数えかたとかもうどうてもいいんだ。
あんなに闇雲に歩きやがって、おかげでクタクタだし約束の時間は過ぎてるし!!しかもこんな人気のない場所、近隣住民だって来ないよ!?
「すみません、これどういう状況ですか?年末働きっぱなしだったから年明けはゆっくりしたいんですけど……」
これから新年会行こうとしてる奴のセリフではないが断るにはこれくらいの嘘は必要………そう、必要悪だ。
「……………あのね、単刀直入に言わせてもらうとね。」
私はめんどくさいやらイライラしたやらで、凪沙さんの顔なんてチラリとも見ていなかった。
寂れた滑り台の階段の数とか数えていた。それくらい、今に関心がなかった。
年末働いたおかげで父の罪も隠しきったし、これから心配なく一年が過ぎ去ることを確信していた私に。
凪沙さんの言葉は重くのしかかった。
「……………好き」
「…………はぁ、何が?」
「……………あなたが」
「それはどうも」
「……………えっと、だから好き…」
「?ありがとうございます」
「……………好き」
「あ、はい」
「……………大好き」
「いやわかりましたよ………………………」
「……………うーん、愛してる?」
「世界一嬉しくない愛してるですね…………………………」
「……………あ、いやそうじゃなくて…私が君に恋をしてるって話でね?」
「え?鯉してる?鯉なら深海先輩が部活で飼い始めたそうですけど見に行きますか?」
「……………ごめん、心って字が書いてる方の恋。魚じゃないよ。」
「ふーん………」
私はさっとスマホを出して感じを調べた。その上で再び滑り台の階段を数えた。
うん、さっきと同じ。
「……………………………あの、この場合どのような反応をしたらいいのか模範解答をくれませんか?」
「……………ごめん、わからない」
「…………………………あ、そう」
恋に疎い者通しの会話は悲惨なものであった。
少女漫画のように嬉しいよ!とか言えばいいかな。
でも、そんなのは苦手だ。
ていうか…
まだ、やっぱり言葉を理解していないかも。