第53章 待ってるのに!! 逆先夏目
いやね?私も頑張って決意固めてね?秘密の地下室に行こうとしてたのよ?夏目くんは教室にいなかったけど、絵文字もなにもない文面で放課後待ってるってだけ来たよ?
「何で……ッ!」
だだっ広い廊下に私の涙声が響く。
生徒会が見れば叱咤するであろうほどの全力疾走で駆け抜け、階段は一段飛ばし。涙でぐちゃぐちゃの顔をブレザーで拭いながら、潤んだ視界を何とかクリアにしていく。
「何でこうなるのーーーーッ!!!!!」
もはや諦めに近い私の絶叫。
私の後ろには………………
「ワンワンッ!!」
大吉くんがいた。
「こ、来ないで来ないで!!それ以上来たら死ぬから!!私が死ぬから!!」
お察しの通り、わたしゃ犬が超苦手だ。
だから涙をボロボロこぼして校舎内を走り回り逃げているのだ。
大吉くんを学院に持ち込んだあげく放し飼いにしたスバルくん覚えとけよ……………まじシャレになってないからね……?
「ワンワン!ワンワン!!」
「何でついてくるの!?もう嫌だよ!!」
夏目くんが怒って私を待ってるんだよ!?大吉くんの相手してらんないんだってば!!!
「くぅーん、くぅーん」
「何か切なそうな鳴き声出してる……ってそれにゃ引っ掛かりませんよ大吉くん!!!」
「ワン!!!」
「ひいいいいごめんなさいいいいいい!!!!」
やっぱ無理だ!!!と廊下を全力で走る。右も左も分からないうちに、私はいつの間にか目的地に来ていた。
図書室のプレートがついている扉を勢いよく開けると、図書室にいた全員がこちらを見た。図書委員長で貸し出しのためにカウンターに座っていた青葉さんもそのうちの一人。
顔見知りを見つけ、私は図書室内を走りカウンターに向かった。カウンターを飛び越え青葉さんの制服をガシッとつかむ。
「助けてッ!私死んじゃうッ!!!!」
「ええ!?」
涙流した女子にこんなこと言われればそりゃ混乱する。しかし、図書室内に尻尾を振りながら入ってきた大吉くんを見つけた青葉さんは全てを悟り黙って対処してくれた。
犬を追い出し、泣きじゃくる私を慰め安心させてくれた。
中々の醜態をさらしたけれど、何事もなくてよかった。とりあえずスバルくん………
ちょっとお話ししたいことがあるかな。