第53章 待ってるのに!! 逆先夏目
『………何で渉にいさんの声がするノ』
開口一番にもしもしと言わない辺り不機嫌爆発。
「物真似特訓中なの」
『そんな嘘信じないヨ』
ああ、駄目だったか……ッ!!
ていうか、渉といとこだって学院の誰にも言ったことないな~……。だって変態仮面って罵倒されてる人をいとこですって公言する勇気なかったものな~………。
変な勘違いされてる気がするな~……。
渉はいつもの笑顔ではなくただボーッとしてあたふたしている私を眺めていた。
いや、ちょっとは私の身になれ。
『へー、ボクからは逃げるのに渉にいさんとは一緒にいるんダ……』
あああもう無理弁明無理
「……覚悟はできるよね、あんず?」
口、調、が、素、に、戻、っ、て、ま、す、け、ど
「ごめん、無理………」
多分今までないくらい落ち込んだ顔をしていたのだろう。目の前の渉が飲んでいた紅茶を吹き出していた。
「ッて汚い!!!」
「いや、ですが………っくく…ふふ…ッ!!」
「笑ってるのバレバレ!!!他人事だと思ってサイテーひどい馬鹿カス!!!!」
「ぷっ…ボキャブラリーが幼稚園児………」
相変わらず笑い転げる渉を放っておいて、電話に戻る。すると夏目くんの声は聞こえてこなかった。
あれ?切れた?
でも電話はつながってるし………。
「もしもし夏目くん?」
『………明日』
「へ?」
『明日なら良いって言ったよネ、今日』
「…………………あのー」
『明日は絶対逃がさないかラ』
「わた…ひ、日々樹先輩ならそこでヒイヒイ笑ってるだけだから私とは何もないよ…?」
精一杯の言い訳も聞き苦しかったのか、夏目くんは電話を切った。でも、その最後に……
『休んだら永遠に許さない』
だ、か、ら
口調が素になってるんじゃー!!!
もうこれ不可避なやつじゃー!!!!
「渉…!そのロン毛を二度とほどけないようにしてやるー!」
「ちょ、まっ……あーーーーーーー!!!!!!」
結局その日は渉に八つ当たりして決着が着きました。