第53章 待ってるのに!! 逆先夏目
私達は散々言い合った末に疲れはてて渉がいれた紅茶を飲んで一息ついた。
「…………渉、放課後に良いバイトない?それか夏目くんが納得する理由が欲しいし……」
「ああ、それなら演劇部の部室の掃除でもしてくれません?男所帯だとどうしても汚れてしまって。」
「給料いくら?」
「給料求めるんですか…。紅茶とお茶菓子なら出せますよ。」
「んじゃ掃除する。」
それで決着が着いた…ら、良かったのになぁ。
そうはならなかった。
「あの、スマホ鳴ってません?」
「……………………………………………………………………………」
私は液晶画面に表示された文字を見てニッコリ笑った。それを不審がっている渉にスマホを見せた。
「………………出なさい」
「絶対ヤダ」
「いやいや、もう避けようないでしょう」
「え、もう別れて良い?」
「お気を確かに」
渉は他人事だと割り切って、この件には関わるつもりが消え去ったらしい。ああ薄情な。
「そもそも、何でそんなに嫌がるのです?」
渉の質問に、私は途切れ途切れに答えた。
「だ、だってさ…………………何か…………その…夏目くんが……そーゆーの目当てみたいで……………嫌だなあって……」
照れ臭かったので両手で頬をおおう。その間もスマホは鳴り続け彼からの着信を告げていた。
「………………………」
渉は無言で私のスマホを奪い取り、何かのボタンを押した。いや、何を押したかなんてもう分かりきっている。
「ちょ、何してんの」
「いやもう…………良いですよ、ほら」
「ほらじゃないよ……!?」
「もうわかりました、わかりましたから。それだけ話せるなら十分でしょう。さっさと終わらせて帰りなさい。いつまでも私の部屋に居座られると邪魔です。」
「えー…………………………」
渉は私に電話を突き返した。画面には通話中の文字が表示されていた。