第53章 待ってるのに!! 逆先夏目
「で、あなた何してるんですか」
「そういう本があるのかなあと」
学院から帰ってきた渉があきれ返っている。そりゃ家に帰ってきて自分の部屋に行くやいなやベッドのシーツの中に手を突っ込んでいるいとこを見りゃそうなるだろう。(私と彼はいとこである………もちろん、拾われ子の渉と血はつながってないけど)
「馬鹿ですねぇ、私はここに隠してます。」
バン!と渉が部屋の壁を叩くとガコンと壁の一部分がひっくり返り、隠し部屋が出てきた。しかもその隠し部屋、広い上に入ってるものがたくさん入っている。
「絶対に見つかりません……!」
「渉!!」
どや顔の彼に私は土下座した。
渉はいとこの私の前では道化師ではなく普通の男子高校生になるので、そこかしこの人間と変わらないリアクションで私を見ていた。
「助けてください!!夏目くんがそういうことばっか言ってくるの!!」
「おお……たった今可愛い可愛い後輩のとんでもないこと暴露されたんですけど」
「でも私全くそういうことに興味ないし何にも知らないの!!しかも夏目くんったら学院の秘密の地下室でやる気なのよ!?」
「そしていとこと後輩のそういう場所まで知ってしまいましたよ!?ていうかやるとか生々しいこと言わないでくれます!?親がいるんですけど!?ていうかあなたその為だけに家に来たんですか!?」
渉の突っ込みが一つ一つ心に突き刺さる。私は土下座の姿勢のまま床にグデッと体を預けた。
「じゃあせめて夏目くんのそういった欲を抑える術を教えて………。あの子思春期爆発させすぎじゃない?何であんなこと言ってくるわけ……?待ってとかやめてとか言っても怒るだけだし…」
「いや、最後のやつは完璧逆効果ですよ。煽るだけですって。」
「じゃあ何て言えば良いの!?」
「付き合ってるんだから素直に頷きなさい!!」
「嫌だ!!」
私と渉の論争は続きに続いたが、決着のつかないまま時間は過ぎていってしまった。