第53章 待ってるのに!! 逆先夏目
「ちょっと子猫ちゃン!!!」
「無理無理!!明日!明日なら良いから!!」
「それ昨日も言ったでショ!?」
付き合い初めて半年。夏目くんと私はこの攻防を繰り広げている。
夏目くんのアピールを避けに避けてきたが、彼からしたら何だか限界?らしくてもう誤魔化しがきかなくなってきた。
「だ、だから…!何で学校なの!!」
「この秘密の地下室なら誰もこなイ!!じゃあ学校以外ならいいノ!?」
「嫌だっ!!!」
ぎゃんぎゃん学院の地下で放課後にこんなことで叫び散らす私達。ああ、今日も無事に終わってくれ。
「どうしてそんなに嫌がるかナ…!!」
夏目くんは頬をぴくつかせて怒っている。
「………な、夏目くんがそんなに…言ってくるから!!」
私は真っ赤になって反論する。しかし、彼は頭を抱え項垂れるだけだ。その隙にちゃっと立ち上がり、地下室から飛び出した。
「ちょっと!また話は……ッ!!!」
夏目くんの声が聞こえたが、私はそのまま階段を一段飛ばしでかけあがり図書室に出た。そこで隠し扉を閉ざし、本棚を動かし扉を隠した。
図書室内で騒ぐと目立ってしまうので、落ち着いて息を整えた。夏目くんが来る前に図書室を出て、教室に鞄を取りに行った。
誰もいない教室にポツリと置かれた鞄。この光景を、ここのところ毎日見ている。つまり夏目くんから逃げるのは珍しいことではないということだ。
(……放課後にバイトとか入れようかな。そうしたら夏目くんもしつこく言ってこないと思うし。)
って、私はいったい何を悩んでいるんだ。そもそも夏目くんがあんなこと言ってくるから……。ああもう、待ってと言っているのに。