第52章
卒業生ということもあって校内には入れた。今日は使われていない講堂へ久しぶりに足を踏み入れた。
………………変わらない、あの頃と。
「………………………あぁ」
思わず笑ってしまった。
思い出した、思い出した思い出した。
………………………………………そうだ、私は斑さんに拒絶されたんだ。
「あんずさん…」
斑さんは息を切らして肩で息をしていた。あの時と、全く同じ。
いつここに来たのか、どうしてここにいるとわかったのか。
そんなことはどうでもよかった。
「………………………何で」
「…………」
「何で忘れてたんだろう……」
「……忘れて欲しかった。」
「忘れたくありませんでした」
「………………俺は、あの日あんずさんを…あんずさんの告白を拒絶した。」
『忘れたいです』
『さっきの答え、忘れても良いですか?』
何で忘れたいなんて思ったのだろう。
何で受け入れなかったんだろう。
何で本当に忘れたんだろう。
「何で…………今さら私を受け入れたんですか?」
必死の告白を拒絶したのに。高校の時、彼は私を拒んだのに。なぜ私と結婚したのか。
「あなたが………………………………俺の全てだったからだ」
初めての呼ばれ方に、心が痛みを訴え叫んでいた。
「俺は………あなたを拒絶するしかなかった」
「…………………なぜ」
「なぜ?そんなの決まっている」
斑さんが真剣に一言一言発していく。私は今度こそ彼の言葉を受け入れるため、聞いていく。