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短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第52章   


私を心配し、距離を近づけてくる斑さんを、自分の夫である人を、私は押し退けた。


「嘘つき」


だって、だって、だって、だって、だって、あなたは。


あなたは私を…………。





「…………………ッ嘘つき…!!!」




ああ、あなたは私をどうした?何でこんなに悲しい?何でこんなに悔しい?何で何で?


ねえ何で?



何でそんな顔をしてるのですか??



何があの時あった?どうして私は一人で講堂にいた?どうして斑さんは肩で息をしていた?



「ごめんなさい」


私は無理やり涙を拭った。目が赤くなろうがもうどうでも良い。


「今は……斑さんといたくない……」

「…………………あんずさん」


斑さんはソッと私の手を握ってきた。震えたその手で。弱々しい力で。



「…………………………………………………………思い出すな」

「思い出すって…何を?」

「思い出したら……俺の側から君はいなくなってしまう………」


斑さんの弱々しい手が私から離れていく。


「それが…………怖くて……………何よりも辛い」


斑さんは笑っていた。
でもその笑顔は、笑顔じゃない。
ただ顔の筋肉が動いただけだ。


「…………ごめんなさい」


私は最後まで彼を拒絶し、水族館から出た。
水族館から出てバスに乗った。


(…………………………………行かなきゃ)


今私を苦しめる、その原点。

思い出したら私はどうなるのかな。


斑さんの側を離れるのかな。



それを辛いとあの人は言った。



私はどうかな。


斑さんがいないと辛いかな。


斑さんがいないのは怖いかな。



学院の最寄りのバス停でバスを降り、ただがむしゃらに走った。


(あの日……私は講堂で……………ッ!!!!)    


思い出せないことがある。

忘れてしまったことがある。




どうして私は講堂にいたのか。




どうして私は斑さんを拒絶するのか。






答えは全部そこにある。






(あの日、私は講堂で_____)

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