第52章
「ど、どうしたんだあんずさん………」
あれから全く眠れなかったので、私は朝から最悪の顔だった。
ベッドから起き上がるやいなや、斑さんにそう言われた。
「………いえ、別に…」
しょぼつく目をこすりながら起き上がり、朝御飯を用意した。
目玉焼きとご飯、味噌汁を出していつもより遅い時間に朝の番組を見ながらたいらげた。
「あんずさん、折角の休みだし水族館でも行こうかあ?」
斑さんはテレビを見ながらそう言ってきた。テレビでは水族館特集のニュースが流れている。
水族館…………高校の時行ったな。
私は水槽に落ちたんだっけ?
「いいですね。」
高校………そう、高校の時。
あの夢の時代。
あの日は……いつなんだろう?
本当にあったことなんだろうか。それとも、夢の中だけ?
「……………どうかしたか?」
「………いえ、何も。」
「そうか?眠れてなかったみたいだし………具合が悪いなら言うんだぞお。」
確信がないのに聞くのはなあ。
夢なんて、誰でも見るし。
(………でも何で…)
あの夢はあんなに嫌な感じがするんだろう。
「あんずさん、こっちだ!!イルカだぞお!!」
「………………」
水族館に行き、はしゃぐ斑さん。
正直ついていけない。この人の体力は無尽蔵か?水槽を一つ見終える度、何で走るんだろう……次が見たいのはわかるけど、水族館なんて走る場所でもないしそんな素早く回るものでもないのに。
「あの、もっとゆっくり……」
「ああ、すまない。つい楽しくってなあ!」
斑さんはニコニコ笑っている。
感情豊かだ。私とは大違い………。