第51章 忘れてしまえ 蓮巳敬人
とりあえず本拠地に戻り、医務室に運ばれた。先生がいつもと全く様子が違う私に軽く悲鳴をあげ、慌てて寝かせてくれた。
「………一応、二日酔いの薬は用意しとくわ。アルコールなんて時間がたちゃあ抜けんだろ。しっかし…ハーベイウォールバンガーなんて普通飲ますかね。
あんなの、女をたぶらかしたい男が飲ませるやつ……………………………」
そこまで呟いて先生は言葉を止めた。寝かせられたベッドの横で座る先輩から不穏なオーラが出たからだ。酔っている私でも確認できる。
「………あー、ドンマイ」
先生はそれだけ声をかけた。そしてホイ、と何かを差し出す。
先輩は受け取らず不審な顔をしていた。
「コイツの着替え。ドレスじゃ寝にくいだろ?」
「…なぜ俺に?」
「俺が着替えさせてもいいのか?」
「……………………………………………やります」
……え、やるの?
私はさすがにボーッとする頭を奮い立たせた。
いやいやいやいやいやいや
「……自分で着替えまーふ…あっちむいれれくらはい…」
「呂律回ってないぞー、お嬢さん」
二人は私からはなれ、ベッドについていたカーテンを閉めた。
(………力が入らない…)
こんなことになったのは初めてだ。酔うなんてことなかったからなー。
それでも何とか用意してもらったジャージに着替え、ドレスは適当にたたんで枕元においた。
(…足に布がある…ズボン最高……)
ホッコリしたところで、私はカーテンを開けた。
「終わりまひは……」
「うわっ!!」
ホッコリしすぎたのかそのまま前のめりに卒倒。先輩が何とか受け止めてくれた。
「先輩力持ち~」
「……………………………度し難い」
「報告は俺からしといてやるよ…蓮巳。」
珍しく先生は自ら仕事をしに医務室を出た。
その背中を見届け、先輩は再び私をベッドに寝かせてくれた。