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短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第51章 忘れてしまえ 蓮巳敬人


私は足に力が入らなくなって、ほぼ全ての体重を先輩に預けることとなった。それなのに先輩は私の体をしっかり支えている。


「お酒に弱いとは思いませんでした。カクテルも初めてだったようです。しかもオレンジジュースだと思って受け取ったんですよ。」


悪かったわね、と悪態の一つもつけない。頭はボーッとするし、目の焦点は合わないし気分だって最悪だ。


「………仕事はコイツが片付けたとうちのボスから聞いた。俺達はもう席を外す。」

「おやおや、それは残念。またお会いできたら「二度とあんずに近づくな」………………厳しいですね。」


そこで会話は途切れた。私は先輩に支えられながら乗ってきた車に戻り、助手席に座らされた。

先輩は行きと同じくハンドルを握った。


「……先輩………お酒、飲んで…ましたよね……」

「これくらいで事故など起こさん。というか、貴様が酒に弱すぎるだけだ。」


先輩はため息をついて髪をワシャワシャとかいた。珍しい行動だ。


「………………すまなかった。」

「…へ?」

「………貴様が暗殺者と消えたとき、後を追うべきだったな。挙げ句のはて、お、女に囲まれるし……。」


とんでもない失態だと先輩は顔を赤くする。私はホントに珍しい、と肩を震わせて笑った。


「………気分はどうだ?」

「あれれ……先輩が三人に見えまふ…。それに何かレンション上がっれきますら~……。」

「……………………………………完全に酔ってるな。」


選択は眼鏡のフレームを押し上げた。


「お前が飲まされたカクテルはレディー・キラー……女殺しと呼ばれるハーベイウォールハンガーだ。レディー・キラーは飲みやすいがアルコール度数が高い。飲み過ぎには注意しなければならないし、お前のように酒にあまり強くないやつは基本飲まない。」

「ほぉほぉ、ハンガーがアルコールにつかって錆がとれたんですねー?」

「待て、どこをどう聞いてそうなるんだ。本当に大丈夫か?」


さすがに焦ったようで、もうすぐ着くからなと先輩は車を飛ばした。

とになく、思考がまともに働いていなかったのは確かだった。
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