第51章 忘れてしまえ 蓮巳敬人
まああの暗殺者はあの二人が何とかするだろう。とりあえず先輩に事情を説明しないと………。
「ねえ聞いた!?あの有名な財閥にお偉いさんが来てるんですって!」
「えー?本当!?」
「しかもめっちゃイケメン!眼鏡男子よ眼鏡男子!!」
眼鏡、と聞いて察しがついた。いやお姉さんよ、アンタ眼鏡に何の魅力を感じてるの?
会場の隅っこ………先輩がいた壁際に、たくさんの女の人が群がっていてその中心に先輩がいた。
(………………………近づけない)
護衛なのに会場を勝手に抜け出したりしてただでさえ事後報告なのに…。
そういえば依頼人は?
と見渡すと、普通に夫婦で楽しそうにしていた。暗殺者も排除したし、もう大丈夫だろう。とりあえず胸を撫で下ろした。
先輩は顔を真っ赤にして女性一人一人に丁寧に対応している。うん、女慣れしてないもんね。
(………目立たないための偽装が逆に目立ったなー)
ボスの財閥恐るべしだ。まさかこんなことになろうとは。
(仕事終わったんだから早く帰りたいんだけど………。でもあそこから連れ出したら余計目立つよな~。…とりあえずボスに連絡して私だけでも先に………。)
とか考えていたら、またあの薔薇が視界に入ってきたの。
ので、クルリと方向転換したが腕を捕まれやむなく向き合った。
「チッ、何のよう?」
「オブラートに包まない性格、変わりませんね。」
舌打ちしながら向き合うと、七種くんは微笑を浮かべていた。飲みますか?とオレンジ色の液体が入ったグラスを差し出され、とりあえず受け取った。
「別に言いたいことをそのまま言ってるだけ……………ねぇ、これ何?」
てっきりオレンジジュースだと思い込んでいたので驚いた。お酒だ。
「カクテルですよ。シャンパンは苦手みたいだったので。」
「ふーん。カクテルなんて初めて飲んだけど飲みやすいね。」
七種くんにしては気が利いてるな……。
まあいいか、と私は気にしなかった。