第51章 忘れてしまえ 蓮巳敬人
「いや、奪われたというべきでしょうか。」
顔をあげて、と言われ背筋を伸ばす。嫌な汗が背中を伝った。
「…………あなたの実力を知った君と同じ部署の人達が、それを利用してあなたの功績を自分の物にすり替えたんだよね。」
……………………全部バレていたとは。
「完璧に…………証拠を消せてはいませんでしたか。」
誤魔化したところで無駄だ。この人たちはきっと見抜くだろう。
「不自然なんですよ。あなたの部署の人はどんどん出世していくのに、あんずさんだけエージェントとしての地位が変わらないんですから。
でも安心してください、俺がその事実を公に訴え………。」
それを聞き、私は慌てて反論した。
「別に、私は出世したいわけじゃ……ッ!ただお国のためを思ってこの仕事をやってるの!!」
「あなたの出世がお国のためになります。適材適所、と言うでしょう?あなたは人の上に立つべきです。」
私は助けを求めるように乱さんの顔を見た。乱さんは彼のいう通りだとそれだけ言った。
「良い選択をすべきです。上に行き、あなたにふさわしいパートナーを選んでください。」
「……………………………パートナー?」
キョトン、としている七種くんは私の手をとってうやうやしく一礼した。
「俺が立候補しますよ。」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………あ、はい」
理解するまで大分時間がかかった。私は若干…いや、かなり引いていた。
マジか
七種くんマジか
「り、立候補も何も私には…」
「……………君が上に来るならば、まずオフィスを変わってもらうことになるよ。…………私が信頼する茨の部署に身を置いてもらうけど。」
「………………………………………………………………
…………………………………………………………あ、そうですか」
とりあえず七種くんから手を離してもらって、乱さんに一礼してその場を去った。
(ちょっと………………………………………ヤバくなったかな?)
今更ながらそのことに気づき、私は卒倒したいのをこらえた。