第51章 忘れてしまえ 蓮巳敬人
なぜこんなに丈が短いのかと聞けば鬼龍先輩曰く、布が足りなかったらしい。(作り直そうとしていたのを止めたのはボスということなので絶対許さない、永遠に)
先輩はグレーのシャツに黒のチョッキ、赤いネクタイ、黒のズボン。髪は右耳にかけたくらいで特に何もないようだが……。
いつも白黒のスーツと黒のネクタイ(喪服にしか見えない)を着ている所しか見ていないので、かなり新鮮だし本人も落ち着かないようでソワソワしていた。
「………これで警護が務まるのか…?こんな格好では失礼だろう。」
「……………」
いやアンタまだましじゃん、という突っ込みを心に秘め渡された書類に目を通した。
なぜ私達がペアにされたのだろう、いや、決まった以上文句はないけれど………
『俺達は部署が違う!仕事は仕事だ、同じ部署の人間と組ませろ!』
『そうですよ!実力差ありすぎますよ!』
『えー?じゃあしょうがないかぁ~。パーティーは男女一組の参加しか認められてないからな~。あんずちゃんはうちで唯一の女エージェントだから他の男と組ませなきゃいけないかな~。
うーん、それじゃあ仕方ないかなあ。その男に可憐なドレス姿のあんずちゃんをどうされても。』
『……………………………………………………………わかった、やる』
『先輩!?嫌ですよ、同じ部署の人と組ませてくださいッ!!』
『えー、でも敬人が……。』
あのやり取りは何だったのだろう。今でも理解不能だ。
「何て書いてある?」
いつの間にか、先輩が書類に首を伸ばしていた。
「うーん、男女一組での参加ということで依頼人は奥様と参加されるようです。つい先日も暗殺の動きがあったとかで………。」
「なるほど……。そういえばそのような報告があったな。」
「パーティーの警備は厳重ですし、限られた人数しか入れないうえに護衛の武器も制限されてます。」
「………………それで俺達二人だけというわけか。」
先輩は納得した、と頷いた。私は仕事の幸先不安なことこの上なく、肩を落とした。
後で言いに行こうかな、せめてタイツはかせてくださいって………。