第51章 忘れてしまえ 蓮巳敬人
「二人に任務があるんだ。」
その言葉で私達は思わず身じろぎした。
まず、私と先輩とではエージェントとしての実力が違う。先輩は私より断然、位が上の部署に所属しているし………任務を遂行する側に指令を出すような仕事だ。
部署が違えば同じ仕事をすることなんてますまありえない。だから私達は驚きのあまり身じろぎしたのだ。
というわけではなく。
((嫌な予感が………))
あ、これフラグだなと思った瞬間それは告げられた。
「二人ともおめかししてくれるかな?」
着替えのためと通された部屋に連れていかれ、着替え終わった私達は
目だけで人を殺せる勢いだった。
「……………………………………」
「……………………………………」
「似合ってるよ、二人とも」
ここで満面に笑えるボス、ほんとすごい。見えないのか私達の顔が。
この地獄直通の道を歩んでいるような顔が。
「……………二人揃って呼ばれたときから気づけば良かった…」
「英智………これにいったい何の意味が………!?」
「潜入だよ。せ、ん、にゅ、う。」
笑って笑って、と先輩の頬をツンツンつつくボス。勇者だよ、あなたエージェントやめて勇者になりなよ。何でこの不機嫌オーラ全開の先輩に話しかけられるの…?何でツンツンいけちゃうの……??
「で……。俺達の目的は?」
「このお方の警護だよ。ほら、見たことあるでしょう?有名な政治家で……。」
「「ボスの暗殺ではなかったか……」」
「二人とも、オブラートに包んで。」
仕事に関する書類を渡され、ボスは部屋から出ていった。
私達に回ってきた仕事は……依頼してきた有名な政治家が出席するパーティーがあるので、その警護だった。
セレブパーティーである。フォーマルにおしゃれ、とその意味はわかるが……。
私が着てるのは黒のパーティードレスで、白のレースが刺繍してあった。(これは先輩の同期の鬼龍先輩が縫ったらしい。)
まあ文句はないがいかんせん丈が短い。太ももに包帯が巻いてあったが、「はずしちゃおうね」と言われてはずした。
傷口は塞がっていて外傷は残っていないが、せめて包帯でもあってくれなきゃ恥ずかしいレベルの丈だ。