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短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第50章 征服欲 鬼龍紅郎


夜になった。

高校生達は戻りだし、ピリピリした雰囲気が漂っている。


「杏里ちゃん、分かってるよな?」

「分かってる分かってる。」


アタシは欠伸をした。

眠たい。


「………ねえ、本当に来るの?その人達……」

「こういうときは来るのがルールだ。」

「ルールって………ちゃんと守るのかい?」


男の子は流石に怖じ気づいていた。まあ無理もない。気丈に振る舞っているが不安なのだろう。


「紅郎がルールを破るはずがない。」


それでもアタシはそう言い切れた。
紅郎は来る。

零も、絶対に。


「………そっか。何だか、その人が羨まし」


そこで男の子の言葉が途切れた。ケホケホ、コホコホと突然口をおさえて咳き込み出したからだ。


「え!?何、どうしたの!?」


いきなりすぎて、若干パニックになった。


「く、薬…ケホ…今日、…のん…コホコホ、でないから……鞄、盗られたし…」


最終的には苦しそうに胸までおさえだした。
まさか、この子病気持ちか?


「おい!この子の鞄、アンタら持ってんだろ!?」

「はー?しーらーねーえー。」


高校生達がニヤニヤと下品に笑い出した。


「………救いようのねぇ馬鹿どもだ…!!」


右目の包帯が邪魔だ。片目だけでコイツらを見るのは惜しい。両目で見ないと悔しい。

訳のわからないプライドが、右目の包帯をほどかせた。

殴られてすぐに冷やしたから腫れはひいたけど、まだ青いアザが残っていた。


「………………やる気か?」


リーダーの男が、スッと目を細めた。


「ここまで来たら………………………何とも思わないとか言ってられないんでね…?」


ハラハラと包帯がその場に落ちる。

ボロボロの体が歩を進める度に悲鳴を上げた。


男の子が咳き込むのをやめた。振り返ると、あらい息をして苦しそうにたおれこんでいた。


「……………………………」


アタシは黙って相手を睨み付けた。

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