第50章 征服欲 鬼龍紅郎
高校生達はそれぞれどこかへ行った。
アタシはドカッとその場に座り、あたりを見渡した。
(スクバ盗られたっぽい……)
別に大したものなんて入っちゃいないがないならないでこれから不便だ。
「……逃げないのかい?」
「………………ん?アタシ?」
未だに手足を拘束されたままの男の子に気づき、縄をほどいてやろうと近づいた。
「こういうとき逃げないのがルール?的なモン。ほら、縄外れたぞ。」
「ありがとう………。」
男の子は律儀に一礼した。
育ちが良いんだろう。きっと。
「アンタは逃げても良いんだぜ。奴ら、見張りも置いてないっぽいし…………。まぁ、帰り道の安全は保証しないけど。」
「いや……女の子を一人置いていけないよ。」
「…………変わってるねぇ。こんなアタシを女の子って言う奴なんてそうそういねぇんだけどよ。」
クスクス笑ってしまった。
あぁ可笑しい。
「ねぇ、君のその包帯………あの人達に殴られたりしたの?」
笑っているアタシに男の子はおずおずと聞いてきた。
別に隠すこともないので素直に答えた。
「いや、普段は違うところでケンカしててソイツらとやりあったときだな…。顔のは親だけど。」
「親……?親が殴るの………!?」
信じられない、と男の子は取り乱していた。まあこんな子には無縁の話か。
目に一発父親から、両頬二発母親から。
何て、きっとドラマのワンシーンみたいなんだろうな。
(今の状況はヤンキー漫画の一コマそのものだけど)
「ふふん、案外知らないことばっかりだろ?」
「うん……」
「アタシもそうだったよ。でも、丁寧に一から教えてくれた奴がいるんだよ。」
「…もしかして、さっき言ってた二面性のあるって人?」
「………………………………………………」
アタシは頭の中に思い描いていた紅郎をサッと消した。
男の子は何も答えないアタシにキョトンとしていた。
「坊っちゃん、言わない方が良いこともあるんだぜ。」
「………………図星?」
やめてくれ、マジで。