第50章 征服欲 鬼龍紅郎
「あんまホイホイ人連れてくんなよ。」
ああ、今日ホント機嫌悪いなコイツ。
「零が来たいって言ったんだよ。アタシだって連れてきたかったわけじゃない。」
「ふふん、杏里は俺の頼み断れねえもんな。」
零がいきなり肩を組んできた。
うーん……毎日弁当を半分分けてくれたりしてくれているので、零には強く出られない所もあるのだが……。
「零のは頼みじゃなくて脅迫だろ。いっつもアタシには選択肢残らないんだから。」
「ははッ、誉め言葉ととらえとくよ。」
笑うと八重歯が見えた。アタシが呆れていると、紅郎がズカズカ歩いてきて肩を組んでいた零を払いのけアタシの手を引いて自分の方に寄せた。
近づいて分かったが、紅郎は今日かなり傷を負っていた。殴られた痣や血が痛々しい。
いつもならケンカくらい無傷で全勝するくせに………。
「……紅郎、お前誰とケンカしてきた?」
紅郎がボソッと名前を告げた。
その名前に零まで目を丸くした。この界隈じゃ知らない奴なんていない、生粋の悪ガキだ。
「お、お前何やって……ッ!!この商店街を取り仕切ってるからって目をつけられたのか!?」
「……違えよ。売られたから買っただけだ。」
「紅郎~、ケンカはバーゲンセールじゃないんだぜ………?」
アタシはめまいがしそうになった。明日からこの商店街は荒れるだろう。
「………どうでもいいだろ、そら帰るぞ。」
「でも零が……。」
「あ?自分で帰れるだろ。」
「ツレねえ奴だな。」
零が肩をすくめた。
夜だからか、すこぶる元気だった。
紅郎がアタシの手を引いて歩き出した。アタシは当然ソレに続き、零もついてきた。
「何でついてくるんだよ?」
「俺ん家こっちだからな。」
紅郎が本当か、と目で聞いてきた。零の家の場所なんて知らなかったが、本当だと頷いておいた。
というのは、不機嫌な紅郎と二人でいるのは嫌だったからだ。