第50章 征服欲 鬼龍紅郎
「零ッ!!変な噂流れたらどうしてくれんだ!アタシもう生きていけないよッ!!」
あの場所から離れて、商店街の一番奥に来た。さすがに不良達もここに来ることはあまりない。
なので零に向かって怒鳴り散らすには最適であった。
「悪い悪い、お前の反応が可愛かったもんでつい。」
「笑ってんじゃねえ!!ハッ倒すぞ!!」
アタシはその場にへたりこんで頭を抱えた。あああ明日から生きていけない。
零はその横に腰を下ろし、相変わらずニヤニヤ笑っている。
「まあでも良かったじゃねえの?今日は怪我ゼロだ。」
「うっっっぜええええ……。」
「マジな話だぜ、杏里。」
突然
突然零の声が低くなった。
零の目が、ろくな光もない商店街に降り注ぐ月光に反射して赤に輝く。
その目にアタシが写っているのが分かった。
「出るとこ出たくねえんだろ…?なら毎日包帯増やして学校行くのはやめろ。クラスの奴等も教師の奴等も薄々気づき始めたぜ。」
「……………」
何に気づき始めたのかなんて、分かりきったことだ。
「零、アタシは「高村」」
零と同じくらい、低い声が商店街に響いた。
「あ…………紅郎」
アタシはヨロヨロと立ち上がった。零の言葉は相当アタシの心に突き刺さったようだ。足が少し震えている。
「…………誰だ、ソレ」
紅郎が零に冷ややかな視線を向ける。零はスクッと立ち上がった。
「俺は朔間零。杏里のクラスメイトだ。」
「…見ねえ顔だな。お前、どっちだ?」
突然聞かれて零は面食らっていたので、説明してやった。
「不良かそうじゃないかって聞いてんの。」
「あー、なるほどね。俺はどっちでもねえよ……。ま、好奇心でこんなとこまできちまう阿呆ってことにはかわりねえけど。」
零は茶化して答えた。全く、食えない奴だ。
こんな時でも緊張の糸なんてもんがない。
紅郎は不機嫌そうに零をジッと見ていた。