第50章 征服欲 鬼龍紅郎
一応学校には行ってる。髪も染めてないし、スカートを校則違反までして短くしてるわけでもない。
そして極めつけ、友達といえる人間が一人しかいない。
「昨日も派手にやったようじゃねぇか。品行方正、英語を除けば才色兼備、素行は良し、友達は一人、いつも弁当を忘れる、そしていっつも怪我してる。
面白いぜホント。変わった奴だ。」
昨日のケンカの怪我は紅郎に手当てしてもらった。というか、毎晩そんな感じなのでアタシは包帯グルグルでいつも登校していた。
なので不審がって誰も近寄ってこないのだが、この零という奴だけはそうではない。
アタシと違ってクラス人気者にも関わらず、なぜかアタシに構ってくる上に弁当を半分くらい分けてくれる。(金がないし、作ってくれる人もいないから昼は基本食べないのが習慣だった。)
それは、今日の昼休みも変わらない。
「…………家にいると電気使っちまうからなぁ。家賃3ヶ月滞納中よ。もう追い出されてもおかしくねえってマジで。」
「…ってことは、親帰ってくんじゃねえか?」
「おーう。3ヶ月分の家賃とこの先2ヶ月分の家賃、生活費を二千円くらいとゴミ置いてってどっか行くけどな。」
「………相変わらずか。そういうのは、出るとこ出るべきなんじゃねえか?」
零がアタシの口に弁当のミートボールを放り投げながら言う。ちなみにこの忠告、もう耳にタコができるほど聞いている。
「出るとこ出てみろ、アタシも捕まる。現に前科アリだ。あーでも、警察の同情なんかは買える自信あるぜ。」
「アホか、俺はそんな話してねーよ。このままじゃお前、いつかぶっ倒れるぞ。ろくに食ってもねえくせに暴れまくりやがって。それに勉強だって身を粉にするぐらいやってんだろ。英語以外。」
「成績と勉強時間が反比例するだけで英語も一応身を粉にしてっからな。自分が英語得意だからってうぜえんだよカス。」
暗くなると電気をつけなくてはならなくなる。すると電気代がかかる。
なので明るい夕方はずっと勉強をしている。
暗くなったら外に行くけど………。
そんくらいしないと、アタシは生きていけない。
それを苦しいなんて、最近は思わなくなったけど。