第49章 独占欲 斎宮宗
男の恐ろしさ、ねぇ…………
「そんなの、もう知ってる」
殴り合いをしても、アタシの方が不利だ。
「ありがとう、心配してくれたんだね。でも天祥院とは何もなかったよ。」
宗の力が弱まった。アタシは自由になった手で宗を抱きよせた。
「………………ありがとう」
「いや……………僕が言ってるのは……」
「ハイハイ、分かった分かった。三日三晩寝てないんだろ?寝るか?添い寝してやろうか?」
「いらんッ!!!」
あれ?素直じゃないな…
「何よー、小さい頃は『杏里ちゃん一緒に寝て~お化け怖いよぅ~』って言って「言ったことないのだよ!!過去を捏造するなッ!!!」」
どうやら宗は覚えていないらしいが、アタシの記憶にはちゃんとある。
紅郎なんかその隣で、『お化けなんて親が子供に使う脅しだろ』とか言ってたよ。幼子時代からアイツ天使じゃなかったよ。
「やっぱり杏里は杏里だ……!今の僕が恥ずかしいッ!!」
宗は床にあった布の中から数枚引っ張ってきて、アタシにぶん投げてきた。
「わぷっ!!何だよ可愛くねえ!!!何でてめえらは天使じゃねえんだよ!!」
「何が天使だッ!!!」
「わ、また投げやがったな…!布は大事にしろこんなガッタガタに縫いやがってッ!!!」
「何がガッタガタだ!!これこそ幾何学模様!!新たなる美への探求を……!」
「意味わかんねえよッ!!」
宗が布を投げアタシはその布の縫い目を全て引きちぎり宗へ投げ返す。最終的に取っ組み合ったり壁にお互いを叩きつけたりとヒートアップしてきた。
「ふざけんなこのクソひねくれ野郎!!!」
「黙れこのチンピラ風情がッ!!」
「てめぇさっきそれ言ったこと謝ったじゃねえかさっそくけなしてきてんじゃねえよ!!」
「それとこれとは話が別だッ!!!」
さすがにこれだけ騒げば皆駆けつけてくる。紅郎、零、みかくん、宗の家族が何事かと部屋を覗きこんだ。
「……お前ら、本当………昔ッからケンカばっかだよな…」
紅郎は頭を抱えた。零は笑ってて、みかくん達は宗が元気になったことを喜んでいた。
メチャクチャのように見えるが、宗とアタシはこれで正しい。
「このクロワッサン野郎!」
「ゴリラ女め!!」
………まあ、やってること幼稚だけど