第49章 独占欲 斎宮宗
「苦しいなら苦しいで良い、辛いなら辛いで良い。
でも…………宗を心から思うファンが、友達が…………ここにいるんだよ。」
届くのだろうか。こんな言葉、そこらへんの感動小説にたくさん載ってるのに。
「だか「もういい」」
言葉は遮られた。
「……ッ……しゅ、…!!」
腕を引っ張られ、宗の胸に引き寄せられた。
「…………………僕は…杏里にそんな顔をさせたい訳じゃない」
宗は両手でアタシの顔を覆い、上を向かせた。
「でも、ありがとう。」
宗は笑った。無理に笑ったように見えた。
「………感謝する」
宗はアタシの髪を少しつまんで、口づけた。
おお、天祥院でも寄せるだけだったのに。
「君…………異性にときめいたりすることってあるか?」
「そんなことは馬鹿らしいと宗がアタシに言ったんじゃないか。現に、君がやったことは天祥院もやってきてる。何か慣れたよ。夢ノ咲では流行ってるのか、ソレ。」
冗談混じりに口づけられた髪を取り戻していると、
宗の表情が変わった。
「…キャッ…!!」
いきなり体制が変わったかと思うと(今日はよく体制が変わるなあ…)、宗に抱き上げられた。
「何だ、可愛い声も出るんだね」
「宗、それ今全然嬉しくねーよ?」
いったい何だ、と思えばベッドに寝転がされた。シワひとつなかったのに、アタシが乗ったせいでシワがたくさんできてしまった。
「いや…今眠くないんだけど」
少し冷や汗が滲み出た。
アタシもそんなに馬鹿じゃない。
宗がベッドに膝をかける。ギシッとベッドが二人の体重に悲鳴をあげた。
「声が低いことと背が高いこととコーヒーが飲めない子供舌を気にしている………フフ、随分乙女じゃないか。」
「宗……ッ………!!」
逃げようにも宗がアタシの手を捕らえていた。
「……教えてやろうか」
スッと宗が顔を近づけた。アタシの耳元に吐息がかかってくすぐったいほど口を近づける。
「男の恐ろしさというものを…ね」