第49章 独占欲 斎宮宗
「宗がアタシを心配してくれたように、皆も宗を心配してたんだぞ。」
アタシは咄嗟にそう言った。
この言葉に嘘はない……が、アタシの言葉は宗に響くのだろうか。
「…………何か………その、悩みとか?……ある、のかな…いやないなら良いけど…………部屋に引きこもってるのはホラ、良くないって…そのせめて、ご飯をたべないと………
死ぬよ?」
正直、アタシはいつも『姉さん悩みがあるんっすよ聞いてくれよぉ!』と自分から泣きついてくる連中の相手しかしないもんだから、泣きついてこない奴の対応なんてしたことない。人生初体験だ。
ていうか死ぬよ?はない。死ぬよ?はないな。
脅しすぎだろ、いや待て何て言えば良いんだ?食べないと死ぬよな!?いやーでも……
「何で君が僕の心配をするんだ。」
「あ、ごめん、えっと死ぬは言い過ぎた、あの、ホラホラ、体調悪くすると…アイドル的にもやばいもんがあるじゃんって話だよ、死ぬよ本当……アイドルとして。」
最終的に死んでんじゃねえか!!
いやーもう現代文無理いいいい。アタシに古典を!古典をよこせ!!源氏物語なら全部訳せるからああああ!!!!
「…………僕は…………君にあんなことを言ったんだ……」
宗の弱々しい声に気づき、ハッと顔をあげた。
「………………どうして君は……」
「宗…………」
「すまなかった、杏里……」
珍しく素直に謝っていた。
アタシより大きなはずなのに、小さく見えた。
「宗…本当に何があったんだよ、アタシのこと……別に謝らなくてもいいんだ……本当のこと、だから」
「…杏里、今日は何の日だ?」
「え?」
アタシは部屋を見渡した。机におかれたカレンダーの日付を見て気づいた。
一年
宗をどん底に叩きつけたあの日から、
一年目が今日だった。