第49章 独占欲 斎宮宗
黙ってドアを開けた。
宗はこちらに背を向け部屋の椅子に座って何か縫い物をしていた。
何だか難しい題名の本しかない本棚、シワひとつないベッド、埃一つないカーペット。裁縫道具の入った小さな棚。カーテンが閉じられた全体的に薄暗い部屋。
何も変わってはいない。
ああ、宗の部屋だな。と懐かしささえ感じる。
カーペットの上にただ縫われただけの布が落ちている。
全て縫い目がガタガタに歪んでいて…完成品なのか失敗したのか、無意味に縫い合わせたのか………
何だか分からないものがたくさん落ちていた。
ベッドにシワがないことから徹夜したことははっきりとわかる。
三日三晩、どんな思いだっただろう。
「何か用かね」
こちらを全く見ない。驚かないってことは、ピッキングしたこともとっくにバレていたということ。
ピッキングに気づいた時点で何も言ってこなかったってことは、拒絶されてないってことで良いんだよね………?
「用はあるよ………でも、宗は多分怒るだろ」
言葉が続かない。
アタシの視点がグラリと揺らぐ。
目に映るのは、天井。
でも大部分の天井は見えない。
宗が、邪魔で……………
「元気そうじゃねえか。」
しかしとりあえずはホッとした。よほどのことがあって落ち込んでたらどうしようかと思った。
徹夜を繰り返し、ろくにご飯を食べていなかったからだろう。顔色は酷く悪いが、アタシを押し倒すぐらいの元気はあったらしい。
「この状況に何か言うことはないのか?」
「何て言ってほしい?」
質問に質問で返した。
宗は黙ってアタシを解放した。
「危機感が無さすぎる。………天祥院に何もされなかっただろうね。」
「天祥院がアタシに何かするとでも?宗はアイツを悪く見すぎじゃねえか。別に、アイツだって……男子高校生なんだぞ。」
みかくんや零達に聞いた話とは大分違って宗は声をあらげることもなかった。
「だから、僕が言っているのはそういうことではなくて………知り合いの女性が男と二人で閉ざされた場所にいると聞いては不安なのだよ。」
「あ、そう」
思わず間抜けな声が出た。まさか、まさかだ。
まさかそんなことを思われていたとは。