第49章 独占欲 斎宮宗
リムジンに乗り込むと……
テレビで見たことあったので驚きこそはしなかったが流石に戸惑った。
車の壁に沿って白い革のソファーがあって、真ん中にはテーブルがあった。
一応行儀よく座った。が、別にどこにいても萎縮しない性格なので端から見たら大柄な態度だったかもしれない。
運転席とこちら側は完全に区切られていて、運転してくれている人の顔すら見えない。
「どうだい?乗り心地は。」
「悪かねえけど………外の景色が見えないドライブってどうなのよ。」
リムジンの窓にはカーテンがついていて、全部閉じられていた。
「別に、外の景色を見るために誘ったんじゃないことくらいわかっているだろう?」
「…………………………めんどくさい奴だな。」
私は思いっきり背もたれに体を預けた。
乗り心地は悪くない。でも居心地が悪すぎた。
私の向かい側に座った天祥院がニコニコ笑っている。
「ねえ高村さん、ちょっと聞いて良いかな?」
「聞くなって言ってお前聞くのやめんのか?」
「やめないね」
それもそうだ、と彼は頷く。
「高村さんはあんまり他人のことに興味がないの?」
「ないわけじゃあない。現に、この無駄なドライブの間も宗が心配なんだ。」
「ふうん…。じゃああんまり他人に干渉しないのはどうして?」
「…あんた下らない質問ばっかだねえ」
「そう?僕にとってはそうでもないよ。」
さっきからこの質問は何だ。まるで悪いことをして警察に送り込まれたような(実際に何回かある)気分だ。
「そうね……まず感情が沸かないからだと思う。皆、そこらへんに転がる石ころと変わらない。アタシからすればね。零と紅郎と宗みたいに付き合いが長いとそうはならないけど。」
「そうなんだ。まあ気持ちは分かるよ。一々他人に目を向けてはいられないもんね。
あの時、斎宮くんは僕にとってそれだったよ。」
「…………」
堪忍袋というものはもちろんアタシにもある。
そして、自分の堪忍袋の緒が切れる音は本当ににするんだ。
プツン、ってね。
さっきからやたら煽ってくる天祥院。それはきっと彼の本心ではない。天祥院だって、
本物の悪ではない。
それなのにアタシは自分で自分を抑えられなかった。いつの間にかアタシはテーブルに右手をつき、左手で天祥院の胸ぐらを掴んでいた。