第49章 独占欲 斎宮宗
「は?楽しい話?」
紅郎が声を出す。
零も口を開こうとしていた。
ああ、ダメだなコイツら。
私は二人が何か言い出す前に彼に話しかけた。
「まざってもいいけど、全てはお前の悪口になるかもよ?」
「ふふ、どうしてだい?僕はあのライブの時、何もしてないよ。」
…コイツ、いったいどこから聞いてたんだか。
「そうか、お前は何もしていないか。詳しくは知らねえが勝手にお前の猛烈な信者的な奴がやったっつーんだろ?」
「そう。僕は音楽を止めたりしてないよ。」
「あっそ。じゃあ一生そう思ってな。」
天祥院との会話はそこで途切れた。零と紅郎も黙っていた。
沈黙。
異様な光景かもしれないが、アタシ達に残された選択肢はそれだけだった。
「………ねぇ高村さん。」
名前を呼ばれたことには流石に驚いた。
彼は黙ってカフェの窓の外を指差す。三人とも同じタイミングでそちらを見ると、黒い……(いやコイツ何でこれのって駅前に来た?)リムジンがとまっていた。
「ドライブしない?」
いっちょ前に、彼はそう誘ってきた。
「……………………………………良いけど。」
「おい!?」
「杏里、お主何を!?」
紅郎と零がようやく沈黙するのをやめた。
緊張の糸がほぐれることはなく、静かなカフェの中ではち切れんばかりに引っ張られていた。
「別に誘拐じゃねえだろ。お前ら先に行ってろ。」
「だからって……!!」
「その間に頭冷やせ。…………今のお前ら、同級生に向ける顔じゃないよ。」
「杏里………」
二人は再び黙った。
「おい天祥院。そのドライブ付き合ってやっても良いが最後にはアタシを目的地に送り届けろよ?」
「わかったよ。そう運転手に伝えておく。」
私は席を立つ。それに続き二人も立った。
「あ、僕が払っておくよ。」
天祥院は勘定をしにレジへ行った。
……………アイツが払うなら、何か頼めば良かった。