第49章 独占欲 斎宮宗
紅郎は黙った。が、眼光は相変わらずアタシを睨んでいる。
「これ、やめんか。」
零が身を乗り出し私たちの間に入った。
「言って良いことと悪いことがあるぞ、二人とも。」
「…………チッ、わかってるよ。悪かったな。」
「はぁ…零といると毒気抜かれて困るよ」
こののほほんとした性格の裏にある零の魔物としての本性が………
たまに本気で怖くなる。
アタシら二人よりよっぽどツッパリに向いてそうだけど、零は要領が良い。
越えるべきでない一線にはあまり踏み込んでこないからだ。
「話が見事に逸れたのう………。」
「あー…宗が引きこもって出てこないって話だろ?」
「そう、それじゃ。学院の者達が何を言おうと出てこんくての。今回はちと強情なようじゃて。」
「なるほどねえ、それでアタシを呼んだのか。」
「うむ。学院の生徒だけでは手の打ちようがない。多忙を極める大学生なのは承知の上なのじゃが………やってくれんかえ?」
私は一発殴ってやろうかと思った。
零がそう言うとき、答えはいつも一つなのだから。
「わかった。やってみるよ。」
零が望む答えで返した。しかし、こんなことなら電話とかでも良かっただろうに。なぜ紅郎もわざわざ顔を出したんだ?
それを聞くと、いかにもなことを言われた。
「頼み事やお願いは顔を見てすんのが常識だろうがよ。」
なるほど、紅郎らしい。
確かに顔を見てするのが一番だ。まあそもそも零は電話とか使えないか。
再び雰囲気が和やかになってきたとき…
カフェの入り口が開き、チリンとドアベルがなった。別に客が入ってきただけだからと気にも止めていなかった。
「やあ」
私達は三人揃って顔をあげた。
そして、その声をかけてきた相手を見て零と紅郎の顔が少し…いや、かなり恐ろしい形相になった。
普段ならこんなことないのだろうけれど、今は話題が話題だった。
「楽しい話をしてるようだから、つい入りたくなっちゃったよ。」
声をかけてきた人物…………天祥院英智は、天使のような笑顔でこの上ないほど威嚇してきた。