第47章 何事にも屈しないけれど時には泣いてしまいそうになる 衣更真緒
二人はしばらく顔を見合わせて何とも言えない顔をしていた。そのうち、瀬名さんがため息をついた。
「意地っ張り」
そして先程よりも更に深いため息をついた。その横で月永さんがにっこりと笑う。それはまるで、ため息により出ていった瀬名さんの幸せを吸い込んだように見えた。
「あんずが克服するためだからな、あんずが好きにしたら良いッ。でもでも、本当に駄目だって思ったらリッツ達を呼ぶ。それは俺たちが判断するから、な!!」
私はほぼ垂れ流し状態だった涙を手の甲でグイッと拭った。このままじゃもっと泣いてしまいそうだった。
「頑張ろう、あんず。」
「…………はい」
月永さんが手を伸ばしてきた。それは、握手を求めていた。恐る恐る手を近づけるが、やはりダメで指の先がチョコンとついただけで手を引っ込めた。
「おっ!!イー⚫ィー!!!イー⚫ィーだ!!あんずイズマイ⚫レンドだ!!自転車に乗って月まで行こう!!俺が連れてってあげる!!俺月永って名字だし!!」
「名字関係ないし話メチャクチャだしもうやめてくんなぁい!?」
「………フフッ、…!」
「ちょっとお!笑ってる暇あるならこの馬鹿止めてよねぇ!!!」
ようやく笑えた。泣き晴らした後で表情が強張っていただろうけど。
私は笑えた。
とりあえずは、この二人にお世話になる。
心の中でお願いします、と最敬礼しておいた。
衣更、朔間……………
いや、
まーくん、りっちゃん。
私、頑張るね!!
りっちゃん、あの時助けてくれてありがとう。今でも忘れてないよ。
まーくん、私のことをいつも気遣ってくれてありがとう。君の優しさ、伝わってるよ。
二人とも、ありがとう。
二年間も辛抱強く私を見捨てないでくれてありがとう。たくさん酷いこと言った。「触らないで」、「怖い」って。
それでも私と向き合ってくれてありがとう。
いつまでも一緒にいたいけれど。
人は三人いれば三つの道を進むから。
それはできないから。
私は私の道を行くよ。