第47章 何事にも屈しないけれど時には泣いてしまいそうになる 衣更真緒
あれから数日、ずっと特訓した結果……
「行くぞっ!!」
「ふん!!!」
と、腕を掴まれても気合いをいれれば大丈夫なくらいにはなった。
「おおお、進歩したなあ!」
「でも触られる直前にそんなありったけの気合い入れられる?無理でしょ?」
「そうなんですよね~……」
今から触るから気合いいれろよ?とか言って触ってくれたら良いけど、そういう時は全くない。だいたい皆私の事情を知ってるからなかなか触れたりはしてこない。
落ちたプリントを拾うときに偶然。私の事情をたまたま忘れて偶然。廊下ですれ違い様に偶然ぶつかる。とか、そんなくらいでしかない。
わざわざその時々に気合いを入れることなんてできない。
「でも、これを進歩と捉えて前向きに行くのもいいかもねぇ。次までに気合いを入れる以外のことも考えなよ?」
「はい、気合いいれて頑張ってきます!」
何だか希望が見えてきて嬉しい。
まだまだ特訓を続けたかったがknightsはライブが間近だし、私も生徒会に仕事を手伝うように言われていたので今日はそこで終わった。
事件は起きた。
生徒会室の扉を開けたのが始まりだった。
「失礼しま「あんず~!!!」」
会いたかったぞ、と姫宮くんが抱きついてきた
……抱きついてきたのだ。
「聞いて聞いて!今日授業でね~!」
と素知らぬ様子で嬉々と語り出す
学年の違う一年生には、私の男子接触恐怖症とでも言えば良いのか、とりあえずそれが伝わっていないことがあった
姫宮くんはそのうちの一人だった
いくら愛らしくても男子。男子、男子。男子だ。
ゾワッと体中を何かが駆け巡った
「坊っちゃま!」
中にいた伏見くんが慌てて姫宮くんを私から引き離した、が時遅し
この時、生徒会室にいたのはこの二人だけだった。伏見くんが姫宮くんに衣更を呼んでくるよう伝えていた
「ゥ、ア、…ッ!!」
「…ッ、あんずさん、気をしっかり!!」
「ど、どうしちゃったのあんず!?苦しいの!?」
「坊っちゃま、お早く!!衣更さまを!!!お願いします!」
プツン、とそこで切れた。全てがシャットアウトされ、私は両手で顔を覆いその場に崩れ落ちて絶叫した。