第47章 何事にも屈しないけれど時には泣いてしまいそうになる 衣更真緒
「という訳なんですけどね!今となってはもう、あの子にワンパンしちゃいたいくらいですよー!!」
なるべく明るく話した。ここでくよくよしては決心した心が折れてしまう。
「………そっか。なら、ワンパンできるように男慣れしないと。…男慣れって言ったら、あんずが男タラシみたいだね~。」
「男タラシ!?待ってインスピレーション!!」
「インスピレーションストーップ!!男タラシの歌なんて嫌ですよ!?」
そんなことしなくても、この二人は底なしに明るい。確かに月永さんがいてくれて良かった。もしかしたら、瀬名さんは私と二人で向き合える自信がなかったのかもしれない。
「さて、早速やっていきたいけど………あんず、どこまでは大丈夫なの?」
「えっとー………なんか、触られてなくても駄目なんですよね。触られる!って認識したらアウ「えいッ!」」
瀬名さんの質問に答えている途中で、月永さんが遠慮なく私に手を伸ばした。言った通り、触られる!と悟った瞬間ビックリして私は数歩下がったが月永さんは容赦ない。そのままガッチリと私の腕をつかんだ。
「………ッや、やめてッ!!!!」
「王さま!?いきなりすぎだし強引すぎ!!」
「何でだ?俺、あんずに何もしないぞ?」
月永さんはいつもの笑顔で笑いかけてくる。でも私は怖かった。もはや、男子に触られ脅えることは条件反射になっていた。
「嫌だ、嫌だ!!!嫌ッ………!!!!」
「王さまはなして!!」
「はなしたら、慣れるどころじゃないだろ?」
「……そうだけど…ッ!!」
「ごめんなさい殴らないで!!ごめんなさいごめんなさい!!!」
私はとうとうボロボロと泣き出した。月永さんは悪びれもしない。これが正しいことだとわかっているからだ。
「セナ、あんずを甘やかさない」
「……………ッ」
「セーナー!」
「………ああもう!!」
はなして、嫌だ、と喚く私の月永さんに繋がれていない方の手を瀬名さんはギュッと優しく握った。
「………殴らないから。」
「……嫌だ、痛いのは……!」
「痛くないから」
「怖いよ…………ッ!!」
「怖くない」
私を落ち着かせようとしてくれた。月永さんはそんな瀬名さんを見て満足げに笑った。
「大丈夫だあんず!俺達knightsだから!傷つけたりしない!」