第47章 何事にも屈しないけれど時には泣いてしまいそうになる 衣更真緒
「はー!楽しかったねドッチボール!!あれ、今更だけどドッチボール?ドッジボール!?」
「どっちでもいいんじゃないか?」
「ひゅー!ナイス駄洒落!!さすが葵くん達の特訓を受けただけはあるね!」
「いや、駄洒落を言ったつもりはない。たまたまだ。」
着替えるタイミングが一緒だったので氷鷹くんと並んで教室に戻る。
私のやけに高いテンションにも何も言わずに付き合ってくれる、本当に良い子。
「それよりお前、ボールが当たっただろう。少し赤くなっているぞ。大丈夫か?」
氷鷹くんがソッと私の顔に手を伸ばす。それが優しさからくるものだと分かっている。
分かっているけれど。
「…………ッ」
私は一歩下がった。
「……ッ、すまない!」
「だ、大丈夫だよ……!!」
私が触られることを嫌っていることと、衣更と朔間なら大丈夫なことは皆知っててくれる。でもやはりこういうことはある。
「………だが震えている…衣更か朔間を読んでくる。待っていてくれ。」
「本当に大丈夫だよ!………あの二人に頼ってばかりじゃ、申し訳ないから。」
頑張って笑った。本当に頑張った。
駄目だ、駄目だ駄目だ。
ここで泣くのは、駄目だ
「そうか………。なら良いのだが。本当にすまなかったな。」
「全然!!」
氷鷹くんがホッと笑ったのを見て、私もホッとした。
でも、そろそろ見逃せなくなってきたかな。私はこのまま過去を引きずっていては駄目だ。
本当に何とかしないと。