第46章 クソ野郎が結婚したようです 七種茨
「………そこまで言うなら良いっすけど…協力って俺何したら「そこはもう完璧なプランを!」あ、長くなりそうなんで明日で良いッすか?」
俺は話す気満々だったが、確かにもう日が変わる時間。そろそろ帰らないとあんずさんも……
ん?
あんず…さ…ん…
「ジュン」
「…顔真っ青だけど?」
「家に連絡すんの忘れてた」
「………おっ前…手伝いたいとか言っといて何やってんだよ」
ジュンの言う通りだ。どうも今日の俺はおかしい。
「それじゃ!俺は帰ります!!」
「おー、早く帰れ」
「ではまた!」
とりあえずフルダッシュするしかない。電車はないし。タクシー止めようか…?
こんなに走ったの、いつぶりだろうか
正直マラソンと言っても過言ではない距離だった。それでも走りきった。タクシーを止めようにも自分で走らないと気がすまなかった
家が見えた
玄関の扉を開ける。彼女はもう寝たのか家の中は真っ暗…
だと思ったら
「こんのバカヤローーッ!!!」
「ブッ!」
いきなりパッと明かりがついて茨の顔面に何やら柔らかいものがスパアン!と綺麗な音をたててあたった
それはリビングのソファーに置いてある見慣れたクッションだった
買うときに固めのやつか柔らかめのやつにするか迷ったんだな…
柔らかめのやつにしといたら良かった
「バカバカ!!!茨のバカバカッ!!」
「いた!痛い痛いです!!」
固めのクッションを投げてきたあんずさんは俺の髪を引っ張ったり再びクッションでバシバシ叩いてきたりと
やはり怒っていた。
「何で帰ってこないの!!」
「す、すみません!お願いだから怒らないで……!!」
「あんたには連絡するって思考回路がないわけ!?」
「すみません!」
「こんな時間まで……!!信じらんない!!!」
「すみま………ッ……!」
彼女の声に違和感を覚え言葉を止めた。
震えていた。まるで泣いているように。
「……………………心配、したんだから…………ッ!!!!」
「………ッ!!!」
それだけ言って、彼女はとどめの一発と言わんばかりにクッションを投げ、そのまま二階へ上がっていった。
ダン!と自室のドアを閉める音が聞こえた。
あんずさんが引っ張った髪もクッションで叩いたところも
痛くもなんともなくなった。