第46章 クソ野郎が結婚したようです 七種茨
知っているようで知らないこと
知らないようで知っていること
そんな不確かなものがあるのならば、嘲笑ってやる
じゃあ、俺は俺を嘲笑うのか?
俺は、何を知っている?
愛する彼女の、何を……………?
「で、急にどういう風の吹き回しっすかぁ?」
ジュンはダルそうに聞いてきた。
俺だって正直ダルい。仕事終わりの体に鞭打ってわざわざジュンの事務所に来て出てくるまで待ち伏せしていたのだから。
「俺、今から帰りなんすけど。」
文句タラタラなジュンに、俺は単刀直入に言った。
「相良さんと閣下の関係について知りたいんです。協力してくれませんか?……いや、してください!」
俺は深々と頭を下げた。ジュンは!?と記号を飛ばして思わず数歩下がった。
「いやいやお前、いつもなら『見返りはたくさんありますよ!』とかそういう交渉してくんじゃねぇか、素直にお願いするとか何があったんだよ!?どこのタンスの角で頭打ってきた!?風の吹き回しレベルじゃねぇよ!」
この際風の吹き回しレベルは放っておこう。確かにいつもならそんな感じだけど!!恥を忍んでんだ空気読め………ッ!!!
「ていうか、その件ならあんずさんが調べ回ってんだろ~?おひいさんに電話かかってきてたぞ。何でお前まで……夫婦揃って何やってんすか。」
「…………だからですよ」
俺はゆっくりと頭をあげた。寒空の下、ずっと待ってたので鼻も頬も真っ赤でアイドルらしからぬ顔をしているだろうが、それでも。
「あんずさんが調べ回ってるからこそです。」
いつもいつも、俺には何も言わないで。無茶苦茶なことをして。それでも何でもないですーって顔をしてヘラヘラ笑っておどけて。
正直、見るに耐えないから。
「あんずさんが………妻が頑張ってることは、俺も応援したい…!!でもいつも一人で抱え込むから!!
俺もあんずのために手伝いたいって思うことは、変ではないでしょう!?」