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短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第45章 チョコレートなんてあげない 漣ジュン


「それより、君はどうして私の家に?」


ジュンは寄りかかりながら答えた。


「何か今日おひいさんどっか行ってて自由に過ごせたし。たまには会いに行こうと思ってさぁ。」


彼の言うどっかは言うまでもなく夢ノ咲なのだが黙っておくことにした。

彼はきっとそのことを根掘り葉掘り聞くだろうし、私はあまり話したくなかった。

嘘は苦手だが黙っておくとバレないだろう。


「ジュン」


嘘をついたらバレる、それは私の長所かもしれない。
その分本当のことを言ったときに信頼感がある。


『これはあんずちゃんの心の問題なんだから』


日和さんの言ってることは正しい。私はわかっていた。ジュンがあのことを気にしていないことを。

だってわかってしまうから。


ジュンのことは、わかってしまうから。

私はジュンのことが好きじゃない。茨が言っていたように、ジュンも私のことが好きじゃない。


それでも付き合ってるなんて、おかしいだろうか。



こうして肩を寄せ合っているのはおかしいだろうか。

本当は別れたくないなんておかしいだろうか。



「ごめんね」



我ながら、それ以上何も言えないのかと思ってしまう。ジュンの次の言葉が怖かった。
それよりも恐ろしいのは、私が次に何を話したら良いのかわからないということだ。

生徒会室での恐怖が蘇ってきた。


「別に、お前がそう思っただけっしょ。」



ジュンは相変わらずもたれかかったままだ。

それだけだった。


それだけで、私がジュンのことをわかってしまうように、ジュンも私のことをわかってしまうのだと


「…………うん」



私は今この瞬間知ったのだ。



「ありがとう」



ひとまずはこの言葉で良いだろうか。もっと伝えたいことがあるけれど。

私は心に引っ掛かっていたものがストン、と落ちた気がした。


「ジュン」

「今度は何だよ」


半ば鬱陶しそうに言ってきた。そして彼はようやくもたれかかるのをやめた。

肩が軽くなった。


でも寂しくなった。

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