第45章 チョコレートなんてあげない 漣ジュン
「えっと、もしかして今の話…」
「ええ!聞いていましたとも!!」
折角の休みをこんなことに使って良いのだろうか……。ていうか何で驚かせようとしたのだろう。そんなサプライズいらないのに。
「……ま、まさかジュンも…」
「いませんよ。彼は部屋で寝ています!」
「…………それが正しい休日の使い方だよ…」
ほとほと呆れながらも、ジュンがいないことにホッとした。
「それより酷いじゃないですか、何で俺には相談してくれなかったんです!?そもそも…」
「……茨、黙って」
またいつもの調子で自分のペースに持っていこうとする茨を凪沙さんが止めた。
流石に逆らう気はないらしく、彼は大人しく日和さんの隣に座った。(ちなみにドロドロの凪沙さんは相変わらずソファーの向こう側から顔だけを出している。)
「……ねぇ、あんずさん」
凪沙さんは心を理解していないと言う。だからか、人一倍言葉がキツイ。
相手の心を思わないから。
「……それだけじゃないよね?」
心を理解していないくせに人一倍洞察力とか、人を見抜く力はあるのだから困り者だ。
「……………そうですね」
嘘をついても無駄だろう。私は確信していた。
ああ、ごめんね。
ごめんねジュン。
「ジュンにチョコレートをあげるつもりはありません。」
私の言葉に凪沙さんはやっぱり、と呟く。しかし他二人は頭にはてなマークを飛ばしている。
「えーっと?」
「何でチョコレートをあげないってことになるんですか?」
茨が無理に笑いながら聞いてくるが、その裏ではまるで猿を見るような視線を突きつけてくるのだった。
つまり、彼は私を馬鹿と捉えたということだ。
腹立たしいけれど、言い返すつもりはない。
私は猿だと言うと、猿に失礼なほど私は馬鹿だった。
軽率で、馬鹿で、この上ない愚か者だった。