第45章 チョコレートなんてあげない 漣ジュン
「ジュンはそんなこと気にしてないと思う」
「い、いたんですか、凪沙さん…」
ニュッと日和さんが座っていたソファーの向こう側から顔を出したのは乱凪沙さん。
「さっきまで発掘しててね。ドロドロのままソファーに座るのは駄目だって言ったら拗ねてソファーの後ろで体育ずわりしてたんだよ。」
「日和くんが私を仲間はずれにした」
まさかの幼稚園児レベルの拗ねっぷりに言葉も出ない。しかしよく見れば顔も服(制服だった)もドロドロである。
日和さんは苦笑しながら凪沙さんに語りかける。
「あのねぇ凪沙くん。ジュンくんが気にしていようがいまいが関係ないんだよ?
これはあんずちゃんの心の問題なんだから。」
「……心……………」
凪沙さんはしばらく黙り込んだ後、申し訳なさそうに眉を下げた。
「……ごめん、わからない……」
そこまで反省しなくても、と逆に困っていると私はあることに気づいた。
「あの、昨日ジュンが言ってたんですけど………皆さん、バレンタイン間近で忙しいんじゃ……」
「……お腹痛いってことになってる」
「僕は頭痛いってことになってるよ!」
思わず顔がひきつった。二人ともリーダーなのに仮病を使うなんてあり得ない!!
「こんなことしてる場合じゃないんじゃ…何しに来たんですか!?」
「……嘘、今日は休み。」
「嘘!?」
「たまにはゆっくりしないとね!!いやあ乗っちゃったよ!凪沙くんナイスジョーク!」
ポカンとする私をよそに日和さんはケラケラと笑っている。
こんなの心臓に悪すぎる。ていうか凪沙さんのジョークはジョークに聞こえない。
「うぅ、茨…茨はいないんですか、あの子いないと私一人じゃあなた方の相手は辛いです…!」
思わず本音が漏れた。二人は怒るどころかニコッと笑った。
まさか………
「呼ばれて飛び出て七種茨です!!」
「ひゃあッ!?ど、どっから出てきてんの!?」
ストン!と上から何かが落ちてきたと思えば、忍者のように綺麗に着地した茨だった。
彼はピッと上を指差した。そこには天井の板はなく、ポッカリ穴が開いていた。
…………日々樹さんがよく出てくる所だ………!!
「驚かすにはちょうど良いかと思いまして!敬礼~」
私は呆れを通り越し、フフッと笑った。