第45章 チョコレートなんてあげない 漣ジュン
放課後にわざわざ放送で呼び出しを喰らった。生徒会室まで来てください、なんて…………
もう嫌すぎて嫌すぎて。
それでも一応顔を出すと、中ではやたらと能天気でソファーに腰を下ろした日和さんと困ったように彼を立って見下ろす英智さんがいた。
「やあ、あんずちゃん。」
英智さんが私に気づき、挨拶をする。
「それじゃあ僕はこれで。全く、こんなことはもうこれきりにしてね。」
「努力するよ!!」
全く努力する気ありません!!というような笑顔を見せる日和さん。英智さんは入り口に突っ立っている私を日和さんの向かいのソファーに座らせ、こっそり耳打ちをした。
「仕事は僕がやっておいたから、ゆっくりお話しするんだよ。」
彼はまるで、この後どんな話をするか全て知ったようにそう言ったのだ。
ビックリしている私を置いて、英智さんは出ていってしまった。
私と、日和さんだけになってしまった。
「あんずちゃん、あのこと気にしてるでしょ?」
日和さんは素直だった。素直にあのことを聞いてきた。この人………とあと、凪沙さんにも相談したけれど。
それは重大な間違いだったのではないだろうか。
「…だ、って…」
「わかるけどね、気にするのも。」
「だって、私…ジュンを傷つけた…!」
思わず大きな声が出た。たったそれだけなのに、胸が苦しくなる。
「………佐賀美先生から聞いたあのビデオのこと…そこに写っていたのがジュンのお父さんって、知らなかった…私、ジュンにその話しちゃったんですよ。
佐賀美先生は悪くないって。私何も知らないのに勝手なこと言って…」
エイプリルフールの日に、呪いのビデオの話があった。私はあの話を聞いた後にジュンと会うことになっていたから、その時に話した。
佐賀美先生を恨んでいる彼からしたら、不快なことだっただろうに。
私は佐賀美先生が悪いと思えなかったから、素直にその事を話した。
「別にジュンくんは…」
「今思えばあのとき笑ってもなかったし…やっぱり、私……」
とうとう弱気になって、無責任なことを言ってしまった。
「どうしたら、いいですか?」
自分で巻いた種を、日和さんに押し付けた。