第45章 チョコレートなんてあげない 漣ジュン
『ふう、やっとジュンくん追い出せたよ!あ、今バレンタインに向けて特訓中なんだ!見に来てね………ってそっちも忙しいかな。』
聞くに、二人はバレンタインのライブに向けて今までずっとレッスンをしていたらしい。
ジュンはそのレッスンをしていた部屋から追い出されたのだが………
電話の向こうから微かに、『ここ開けろ』『許さねぇ』『ふざけんな』と聞こえてくるのは気のせいだと思いたい。
追い出されて扉の向こうから叫び散らして扉ガンガンぶっ叩いてるなんて気のせいだと思いたい。
もう一度言う、気のせいだと思いたい。
『あんずちゃんのチョコ楽しみに待ってるよ!!』
「義理っ義理の義理を差し上げます」
『そんなに強調しなくても良いよね!?』
一通り馬鹿馬鹿しい話を終えたあと、日和さんは本題へと入っていった。(電話の向こうからジュンの声が聞こえなくなった……これは完全に怒って拗ねたことを意味している)
「あの、ジュンが…」
『僕が何とかしとくから』
その言葉に不覚にもときめいたが、この事態は全てこの人のせいなので至極当然のことである。
『ところで君、暇なときある?』
「愚問。ないですよ。」
『じゃあ何がなんでも明日開けといてね!!』
「あのですね…『英智くんに頼んでおくから!』」
と、一方的に電話を切られた。
(うわあぁ……………………果てしなく面倒くさい…!!勘弁してよ…!!)
頭を抱え、今度こそスマホの電源を落とした。
誰かから着信が来るのが何よりも怖かったからだ。