第45章 チョコレートなんてあげない 漣ジュン
『え、まさかくれねぇの?』
慌てて我に返る。
私は咄嗟に言ってしまった。
「あげ、る………」
これまた大失敗。いったいあの決心はどこへいったのだろう。
チョコレートなんてあげないって決めたのに…
『…何でそんなにキョドってんの?』
「…え、あ…そうかな?」
あと強いて言うなら私は嘘が苦手だ。
どうしても態度に出る
『ま、くれるんだろ?』
「……………うん」
『何その間』
電話の向こうからジュンの笑い声が聞こえる。良かった、機嫌を損ねたりはしていないみたい。
「それより、君さ…こんな時間に電話、かけてきたんだから何かあったとかじゃないの?」
『いや……特に何もねぇけど。バレンタインのチョコ誰にあげんのか気になっただけ。』
「晩御飯なんだった?みたいなノリで電話してくるのはやめてよ………。」
お陰で心臓を君に食い殺されるところだった。爆弾まで落としてくれてさあ。
と、言いたいのをぐっと我慢する。(私の頭の中の話なので言ったところで伝わらないだろうが。)
『だって気になるっしょ、彼女が男所帯の紅一点なんだし。』
「安心して。嵐っていう女神がいるから。」
私が言い終わるか終わらないかのうちにジュンの怒声が飛んできた。
『それ男か!?』
「答えようがない質問だね!」
うん、と言いたいけどうんと言ったら嵐は怒るだろう。あの子怒ると怖いんだよ!?
ちなみに、ジュンは束縛と言うか嫉妬と言うか、かなりキツイ方らしい。
私達が付き合っていることを知っているのはEdenのメンバーのみだ。嘘が苦手な私のせいで、あっさりばれた。(逆に気づかない夢ノ咲の人達が鈍すぎる)
その人達全員が、ジュンの束縛の強さを指摘するのだった。
一回、私も身をもって経験したことがある。
Eveの二人とカフェだかなんだか(玲明に行くつもりが日和さん得意の我が儘でカフェになった)にいたとき、隣に座っていたのが偶然同じ中学の男子で、Eveの二人そっちのけで話していたら
ジュンはそのあと一週間口を聞いてくれなかった。
めんどくさいので放っておいたら、ジュンから「何で何も言ってこねぇんだよ」という意味不明な彼女からのメールランキング上位はかたい文章が送られてきたのだ。
なので嵐という名前を出しただけで怒っているようだった。