第44章 明日ハレバレ良い日和 巴日和
「…………うるさい」
あんずは顔を覆って、今度は怒りではなく羞恥から真っ赤になった。
(………いったい何て言ったんだ、君は…)
英智は何となくのろけられた気がして遠い目をした。
「とにかく!訂正記事とか色々出してくれたのはありがとうございましたッ!!!」
「……………もしかして、お礼を良いに来たの?」
「違うしッ!!うちあんたに文句良いに来ただけやもん!」
「エセ関西弁はやめなさい」
素直じゃないくせに、分かりやすい。あんずは本当に英智をかき回す。
「とにかくもう大丈夫です!!………これ以上は怒られそうだし…」
「ん?何か言ったかな?」
「いえ何でも!!」
本当は聞こえていたが、英智は何となくからかった。先ほどののろけのお返しだった。日和がどんなことを言ったかはだいたい察した。
「…………あなたこそ大丈夫ですか?」
「僕?」
「だって、体調悪そうだし。」
あんずがの問いに、英智は特に言い返さなかった。大丈夫だと誤魔化せないほどには、彼の体調は悪かったのだ。
「無理しないでくださいね。」
ポン、と英智の胸元のポケットを軽く叩き、あんずは立ち去っていく。そのしぐさにどことなく見覚えがあった。ポケットを探ると……
「ああもう……………」
思わず笑みがこぼれた。そこにのど飴が入っていたのだ。自分の真似をしてくる茶目っ気がおかしかった。
「だから僕は……………」
君が大好きなんだ。
恋とは違うけれど、英智の胸を暖かいものがつつむ。
(頑張れ、日和くん)
心の中で旧友を励まし、英智は生徒会室へ帰っていった。