第44章 明日ハレバレ良い日和 巴日和
日和は数日悩んだが、仕事がない日に英智と会うことにした。
夢ノ咲学院近くのカフェが約束の場所となったので、日和はジュンにも内緒でこっそりとそこへ向かった。
約束の時間ピッタリに着くと、もうそこには英智がいた。
中に入り、お互いに紅茶だけを頼んだ。運ばれてきた紅茶に砂糖を入れるでも、ミルクを入れるでもなくただそれを日和と英智は眺めていた。
しかし途中でハッとして、日和は口を開いた。
「英智くん、あんずちゃんについての話って何かな?」
その問いに英智はスッと目を細める。この前より体調はよさそうだが、まだ体調は悪いように見えた。
「日和君、雑誌とかは読むかい?」
「雑誌?愚問だね。読まないよ。」
「僕は読むよ。体調が悪くて入院してるときとか、学院に行けないときとかにね。」
そこでようやく英智は紅茶に口をつけた。しかし表情は変わらず、目は見えない何かを睨んでいるように細いままだ。
「それが何かな?」
「君はもっと自分が有名なアイドルだという自覚を持つべきだと思ってね。」
「そんなもの僕はもうすでに…」
「じゃあこれは何かな」
いきなり英智の声が低くなり、鞄から雑誌を取りだし乱暴に机の上に置いた………というより、叩きつけたに近かった。隣の客がチラリとこちらを見るほどには。
「…………ッこれ…!」
思わず雑誌を引っ付かんだ。表紙には手を繋いで笑い合い、仲良く歩く二人の姿があった。
私服を着ているし、恐らくデート中のもの。
まさか撮られていたなんて…………
「玲明からの忠告も、ユニットメンバーである彼の言葉も……日和くんのことだから聞き流していたんだろうね。君はそれで良かったのかもしれないけど。」
英智は随分と刺のある言い方をする。さすがの日和も黙った。
これから彼がどんなことを言うのか、あんずがどのような状況下にあるか、そして自分の立場が危ういほどに揺らいでいるであろうことは安易に想像できたからだ。