第44章 明日ハレバレ良い日和 巴日和
「じゃ………またね」
英智はポン、と日和の胸元を叩いた。そして校門の前にやって来たリムジンに乗ってさっさと帰っていった。
「………………………送ってもらっていいですか?」
あんずはギュッと日和の制服の袖をつかんだ。何だかんだ言いつつも一人で帰るのは心細かったのだろう。
「もちろんだね!!」
日和は満面の笑みを浮かべた。
あんずと別れてから、駅に向かう。切符を買い電車に乗り一呼吸ついたところでスマホを取り出そうと胸ポケットに手を入れた。
寮の規則で、この時間の外出は認められていない。ジュンに上手くいっておいてもらうよう頼むためメールを送ろうとしたのだが。
「……………?」
胸ポケットに入っていたのはスマホだけではなかった。
見覚えのない真っ白な……乱雑に破りとられたノートの切れ端が入っていた。そこには
『また今度二人で話そう。あんずちゃんのことについて。』
と書かれていた。
見たことがある。この文字は、英智の字だ。
去り際に胸元を叩かれたことを思い出す。あの時に入れたのだろうか。
英智は気づいているのだろう。最近二人がギクシャクしていることに。そしてその理由を知っているのだ。
これは会わない手はない。
しかし、彼の弱りきった顔を思い出すだけで…………日和はそれがとても彼にとって気の毒なことのように思えて仕方ないのだった。