第44章 明日ハレバレ良い日和 巴日和
鞄を取りに教室に行き、昇降口でローファーにはきかえる。
既に鍵が閉まった昇降口の扉を開け、校門へと歩いていく。
そしてあんずは目を疑った。
英智の行った通り日和はいた。確かにそこにいた。校門に一人で立っていた。
「……………………」
黙って校門に暗がりで一人佇む彼は、何時にも増してかっこうよく見えた。
あんずは咄嗟に目をそらした。踵を返し、ここから立ち去ってしまいたかった。
(……………私は)
誰にも言えないあんずを苦しめる悩みが、足を止めた。
しかし出口は彼が立つ校門しかない。
「………あ」
不自然に立ち止まるあんずは、どうやら日和の視界に入ったようだ。
「あんずちゃん」
彼は駆け寄ってくる。
「えっと……さっきのこと、謝ろうと思ってね。ジュンくんは先に帰ってもらったんだけど…」
口ごもる彼を見ていると、あんずは罪悪感に襲われた。
「………私も、言い過ぎました…」
反射的に謝った。
「うん、僕もだね。仕事の邪魔しちゃったからね。」
日和はいつもと同じ笑顔を顔に浮かべた。
しかし内心は穏やかではない。
最近、あんずとの喧嘩が増えた気がする。それに自分が無理矢理に会いに行かないと彼女とは会えなかった。
休日のデートの誘いも全部断られ、電話もメールもろくにない。その時はさすがの日和も自分がベタベタしすぎなのかと悩んだほどだ。
あんずはベタベタするのが好きではないと知っている。しかし………
最近は目に余る。
実際、先ほども自分を見て足を止めたし………。
「………その、一緒に帰っていい……かな?」
だからか、途切れ途切れの誘いの言葉しか出てこなかった。
案の定、あんずは困ったように眉を下げる。
少し前までは笑って答えてくれたのに………。
「だ、だって一人は危ないからね!?もう暗いから!!」
「………別に危なくなんか…」
必死に誘う日和をあんずが断ろうとしたとき……
ポン、とあんずの両肩を誰かが叩いた。
「送ってもらったら?」
英智だ。やはり顔の青い彼は、今にも倒れそうにそこに立っていた。
思わぬ弱りきった旧友の登場に、日和は目を丸くした。