第43章 …………マリーなんとか 乱凪沙 後編
ちはの意味は、後日にわかった。
結婚式前日。独身最後の日だから親の元で過ごそうと二人で決めていたのに………
朝起きて、彼は二日酔いに頭を抱えながらも私の手を握り外へと引っ張り出した。
いつもなら家周辺でも迷子になったりするくせに、私の手を引く彼は頼もしく電車に乗り込んだ。
名前も聞いたことがない駅に到着し、歩くこと数十分。
辿り着いたのは墓地。
そこで何となく気づいた。
ちはの間に空いていた妙な間もこれで納得できる。
父の墓、だ。
「…………神なる、父よ」
彼は笑った。心の底から嬉しそうに。
…………彼には見えているのだろうか。在りし日の、父が。
「…………私、結婚するんだ」
お花を添えて、線香をあげて。
凪沙さんは本当に嬉しそうだった。
………………………つきいる隙がない。
彼と父には、見えない…見えるはずのない………それなのに何よりも強い絆がある。
私はそれに勝てない。
凪沙さんの一番にはなれない。
それが悔しくて、彼の父の墓参りには来なかった。父親にやきもちなんてみんな笑うだろうけど。
それでも、凪沙さんの一番になれなくても。
私が…………結婚しようと思ったのは
彼と一緒にいようと思ったのは
(どうしようもないくらい、好きだから……………なんてね)
そんな誰にも言えないような恥ずかしい言葉は胸に秘めよう。
今はこれで良い。
これだけで良い。
凪沙さんの笑顔が、私を幸せにしてくれる。