第43章 …………マリーなんとか 乱凪沙 後編
「あんたはどこの少女漫画から出てきたんだ」
「…………?ごめん、漫画の世界には行ったことがない。」
ああああ雰囲気台無しじゃないかさっきまでかっこよかったのに!
「…………あの、納得してくれた?」
おずおずとした態度で尋ねてくる。
私が黙って頷いた。
この人のペースにのせられるといつもこうだ。
「…………良かった」
ああ、そんな天使みたいな微笑みを見せるな!!何か心が痛いッ!!
こっちこそプンプンしてごめんじゃんんんんんんんんん
口にも表情にも出さず、そんなことを心の中で叫ぶ。
本当に、この人には………
敵わないなあ。
「それじゃあ、お世話になったね!」
「すみません、がっつり寝ちゃって。」
私達の騒動も収まったので、Eveの二人は帰ると言い出した。
ジュンは日和さんに無理やり起こされていたので不機嫌そうだが。
「いえいえ、お疲れのところ巻き込んでしまいまして………」
「かまわないね!!」
「仕事は午後からなんで」
二人はにこやかに笑う。凪沙さんも連られてニコリ。
ああ守りたいこの笑顔。
「あ、そうだ!プレゼントは冷蔵庫の中に入れておいたからね!」
「プレゼント?」
「凪沙くんあてだよ!勝手に見たりしないでね?あんずちゃんには式の日にわたすから!」
日和さんはいたずらっ子のようにウインクをした。
そして日和さんはじゃあね!と手を振って玄関のドアを開けた。凪沙さんは見送るために外へ出た。
ジュンはしばらく、ポツンと立っていたがやがて私にゆっくり手を伸ばして頬に触れた。
何事かと思っているとジュンは怪しく笑ってポツリと呟いた。
「良かったっすねえ」
「………………………起きてたのか」
どうやらあの一部始終を見ていたらしい。完全に寝てると思ってたのに!!
外から日和さんの急かす声が聞こえて、ジュンは外へ出ていった。
真っ赤になった私は、外に出ることもなくEveの二人の足音が遠ざかっていくのを玄関から聞いていた。