第42章 …………マリーなんとか 乱凪沙 前編
外に干してあったタオルと着替えを持ってきて、とりあえず脱衣場に戻って体を拭いてもらった。その間にびちゃびちゃにななった床を拭いていく。日和さんがお腹を抱えて大爆笑。
「さすがだね凪沙くんは!!ほらね、彼は君がいないとこんなこともできないよ!」
「だからって服を着たままシャワーを浴びる男がいますかッ!!」
怒りのあまりバシッ!と床に雑巾を叩きつける。ここで「あの人には私が必要なんだ!」とかならないのが私である。
「何なのあの人、本当に何なの………理解不能、あぁ、もう……」
雑巾を拾い上げ、深い深いため息をつく。
凪沙さんが苦笑する。
「頭でちゃんと理解しようとするのは君の美点だね。でも、最近は裏目に出てないかな?」
「日和さ「…………拭いてきた」」
ヌッと後ろから現れた鳴き声さんは、ちゃんと着替えて体も拭いていたが……
髪がびしょびしょのままだった。
「ああああ!!!もうそこ座ってろッ!!」
「…………どうして怒ってるの?私、変なことした?」
「何回言わせるんです!お風呂から出たら髪を乾かしてって!!」
雑巾を持って脱衣場へ行き、洗面台綺麗にすすいで手を洗った。
ドライヤーとタオルを持って彼のところに行き、ズイッと差し出した。
「…………今日、不機嫌だね」
「あぁ、凪沙くんそれ言っちゃ」
日和さんが慌てて私達の間に入る。正直、怒りのパラメーターはマックスだった。
何もかもあんたのせいだってのに……!!
「凪沙さんなんてもう知らないッ!!!」
ドライヤーとタオルを投げると、日和さんが器用にキャッチした。
私はそのまま二階に上がった。すると、凪沙さんの部屋からジュンが出てきた。あんなに叫んだから起こしてしまったのだろうか。
彼を見ると、少し落ち着いた。しかしやり場のない怒りの矛先を向ける場所がない。
「………やっぱ、あんずさんの方がヤバかったっすねえ」
彼はそう言って優しく微笑みかけた。
その微笑みに安堵すると、私にも笑う余裕ができてきた。